私の家族(7) 母の死亡確認
最後に発見された母の時まで、何体の遺体の顔写真をみたことか・・・。
きれいなままの顔もあれば、損傷が激しい顔の写真もありました。
遺体リストの中には焼死体状態で男女判別も不明、顔写真に出来ない遺体も存在していました。
遺族の立場でない人は、その確認行動自体が、苦痛とか、悲惨とか、残酷とか思うかも知れませんが、当事者は全然気になりません。
(そう思うしかありません)
なぜなら、 “家族を早く発見せねば” の目的ですから、違えば “違う顔の写真” でしかないのです。
この感覚が異常と思えば異常なのかも知れませんが、当事者はそんなもんです。
最後の発見の母の時は、顔写真での確認は通用せず、初めて行方不明届けが役に立ったのです。
自衛隊の3日間の集中捜査(3/31~4/2)が行われるというニュースがありましたが、集中捜査の翌日の4/3(日)に、自宅付近を走っていたら、携帯電話がなり、車を止めて出たら警察からの電話で、母らしき遺体が(集中捜査の最終日に)発見されたとの情報だったのです。
女房の時もあり、自分だけの確認では不安で、以前に女房の確認に貢献して頂いた叔母、女房の実家の義姉、更には仙台にいる妹(長女)、母の姉妹等も駆けつけてもらっての遺体確認になったのです。
妹が来るまでに事前に確認したのですが、顔の写真、実際の遺体の顔を見ても、どうしても母とは思えない顔なんです・・・。
ところが、遺留品の中に、見覚えのあるリュックサックが・・・。
私が約30年前に初めて買った車(マツダのファミリア)の景品だったリュックサック・・・。
いまだにそのリュックサックを大事に持っていたことに驚き、更には、その中には、もう入れない位の避難用物資が入っており、母名義の通帳、薬、マスク、着替え、携帯ラジオ、タオルなどなど・・・・。
顔からは母と確定出来なかったのですが、遺留品は明らかに、我が家、母の物であり、車で避難するまでに時間をかけていた理由が分かり、母らしいな~、と納得するのでした。
仙台の妹(長女)が合流し確認すると、
“エー!このリュックサックまだ(大事に)あったの!?”
“あー!この身に付けて衣装は、私が仙台で買ってプレゼントした物!”
“(顔、歯形を見てしばらくし・・)やっぱりお母さんだ~。”
ということで死亡確認となるのですが、どう見ても、私には母の顔には見えなかったのです。
(叔母も今回は写真からは母とは思わなかったとの事)
正直、私にとって、家族の中では性格が似ているところもあったせいか、母とは一番、気が合いませんでした。
結構、気が強くて、私とは大喧嘩にまで発展し、家族に迷惑をかけることも度々ありました。
今回も母は、最後の発見となり、迷惑をかけましたが、それでいて心配性の母が、避難用物資を離すことなく持っていたことで自己主張し、父と女房の元に合流したんだな~。と感じました。
当時、死亡確認より行方不明者が断然多い中、3人揃って発見出来たことは奇跡に近く、せめてもの救いと思っています。
スポンサードリンク
関連記事
-
-
3月12日の行動(4) 予想を遥かに超える津波
あるべき物が何もないんです。 そしてある訳がない物があるんです。 我が家の庭に、小型
-
-
3月15日の行動(2) 戦場の中の様な
自宅付近を確認後、次に目指したのは気仙沼市内にある病院です。 国道45号線に平行する山沿いの農道を
-
-
3月14日の行動(2) 避難物資の買物教訓
千厩町(一関市)の郊外の大手スーパーやホームセンターに開店待ちで並んでいる状況を無視し、私達は、どの
-
-
私の家族(6) 女房の死亡届・火葬
父の死亡届で経験していますので、女房の時はスムーズでした。 この時にはスクーターが届いており、
-
-
3月16日の行動(3) 決意
本来の避難場所が避難場所にはならなかった状況は、私たちの予想を遙かに超える悲惨な状況でした。
-
-
3月11日の出来事(2) 帰せコール
「こんな状況で仕事は出来ない」「家族が心配だ」「大津波警報が発令した」等の意見があいつぎ、 “
-
-
3月12日の行動(5) 実家での出来事
工場に戻る際、山道のルートを変え、○○小学校付近の伯母(父の妹)の家に立ち寄りました。 伯母の
-
-
3月15日の行動(1) 車の発見
翌日(15火)の朝になり、Y氏と何とか実家で合流し、実家の2階の部屋にコタツ、ストーブ等を準備しても
-
-
3月14日の行動(3) 情報基地
千厩(岩手県一関市)での買い物を終え、工場に戻ると、既に、海外工場出向組、気仙沼出身組が2台の車で無
-
-
家族からのメッセージ(8) 一番伝えたいこと
私は、毎年 お母さんの実家へ夏休みと冬休みに5日間ぐらい泊まっていました。 ですが、この東日本
スポンサードリンク
- PREV
- 私の家族(6) 女房の死亡届・火葬
- NEXT
- 私の家族(8) 母と次女
