*

震災遺構 南三陸町防災対策庁舎(4)

公開日: : 震災からの復旧・復興, 震災遺構

南三陸町の防災対策庁舎の保存問題。
これまでの経緯と、力関係と、民主主義の進め方(多数決など)を考慮すると、結論としては、


『震災遺構として保存するために20年間の県有化の棚上げ』

に向かうのではないか!? と私は感じています。

南三陸町の将来、震災以降として最も貴重な財産、と考えると、町職員遺族のスパンが短い考えでの意見は少数意見となってしまい、却下されてしまうのではないかと危惧しています。

そこで、少しでも町職員遺族の感情が低減できるような中立的な観点で提案したいと思っています。

防災対策庁舎の埋葬化

震災前の防災対策庁舎からすれば、震災以降の防災対策庁舎は遺骨のような容姿です。
だからこそ、津浪の威力、恐ろしさを体感できるので震災遺構候補になっているのだと思います。

そうであれば、防災対策庁舎を埋葬したら!?

というのが私の提案です。

防災対策庁舎をすっぽりと鉄骨で作った『納骨堂』で囲ってしまい、更には、その納骨堂を土盛りし、イメージ的には古墳のような外観にしてはどうか?との提案です。

そうすることによって、外側からは遺骨(防災対策庁舎)は容易にみることは出来ず、町職員遺族など、防災対策庁舎を『見たくない』という町民に配慮できるのではないか?と思うのです。

存在すら認めず解体前提の意見には不十分だとは思うのですが、万一、保存のために20年間の県有化による棚上げになってしまったら、今のままの姿で長期にわたり苦痛を受けることになり、1か0かではなく0.5の妥協点を探った方が良いのではないかと思うのです。

埋葬化の提案によるメリット

足りない頭で提案によるメリットを列挙したいと思います。

1.県内で一番残すべき震災遺構に適した予算の活用

国(復興庁)は各市町村1つに限り、震災遺構保存のための初期費用を支援することが決定されており、防災対策庁舎の塩害などによる耐久性や老朽化を防ぐ方法として、安易に残った鉄骨に処理を施すことでなく、すっぽり覆う位の予算を付ける価値があると思うのです。

20年間の県有化による棚上げ論には、せいぜい、鉄骨の防錆対策を施し、広島の原爆ドームの様に、そのまま残す考えではないかと思います。

2.災害復興計画との調和

現在、防災対策庁舎を含む市街地は復興計画に基づき、土盛りし全体のかさ上げ工事が進行中です。
防災対策庁舎を覆うことにより、周囲同様にかさ上げすることが出来ると思うのです。
また、中に入れば、防災対策庁舎が立っていた地面の高さが分かり、『納骨堂』の最上階に上がれば、一部からは復興後の町内も見える様にしておくことによって、復興後の町内の高さと比較することも可能になると思うのです。

【防災対策庁舎のすぐ近くまで復興計画による土盛りが遂行中】

bousaicyousya2

3.納骨堂内は震災遺構などの展示場

多少の入場料を徴収し、遺構や震災当時の記録(写真)の見学ルートを設置し、納骨堂の最上階(防災対策庁舎の屋上の高さ)からは、その高さにまで津浪が押し寄せたことを実感してもらうようにしてはどうでしょうか?
その位置からは、外からは気づかれませんが(マジックミラーなど考慮)復興後の高さや海が見える様にし、内部(震災直後)と外部(復興後の町内)の変化も見せることが可能で、納骨堂の高さ活用は有効と思うのです。

4.防災対策庁舎の上を避難所に

防災対策庁舎を含む周辺を震災復興祈念公園として整備する計画なそうです。
その際、その公園内に避難場所になる丘を整備する予定になっているようですが、そうであれば、防災対策庁舎の上部を丘的に土盛りし、その部分を避難場所に活用したらどうでしょう。
犠牲者を出してしまった防災対策庁舎の上部が、東日本大震災レベルの津浪が到達しても、安全な高さの避難所になれば、犠牲者への追悼の証にもなると思うのです。

 

私の提案が『考えが甘い!』ってお叱りを受けるかも知れませんが、別に私の提案がどうなろうとも、解体派・保存派の合意形成なされた結論に導かれることを願っています。

 

スポンサードリンク

関連記事

震災遺構 南三陸町防災対策庁舎(3)

石巻市大川小学校の保存の議論 南三陸町の防災対策庁舎を震災遺構として残すか否かの議論の参考になるの

記事を読む

住宅再建(3) 自力再建の制約2

体験談初回はこちらから 3. 被災地内外で危険区域以外の土地を確保し住宅建設 前号では、被災地内

記事を読む

住宅再建(4) 防災集団移転促進事業(住民主導型)

体験談初回はこちらから 4. 住民主導型の防災集団移転促進事業に参加し住宅建設 本号からは、行政

記事を読む

住宅再建(2) 自力再建の制約1

住宅再建の早い順の選択項目ごとに、制約条件やメリット・デメリットについて考察したいと思います。 1

記事を読む

長引く避難生活における様々な判断(住宅再建)

住宅再建のための的確な判断とは 今回の西日本の洪水・土砂災害と東日本大震災において、広範的な被害と

記事を読む

住宅再建(6) 遅すぎる住宅再建による変化

体験談初回はこちらから 6. 市主導型の防災集団移転事業に参加し住宅建設 前回に引き続き、もう一

記事を読む

防潮堤問題(2) 危険区域

防潮堤の高さが直結している『まちづくり』の中で、被災地・被災者にとって、直接影響し、判断を迫られたこ

記事を読む

防潮堤問題(3) コンクリート

私たち被災者は、好き好んでコンクリート塀に囲まれるような防潮堤を望んでいるわけではありません。

記事を読む

no image

長引く避難生活における様々な判断(仮設住宅)

住宅再建までの充電期間の仮設住宅学校の体育館など、過酷な公共施設での避難生活から、早期に開放される必

記事を読む

防潮堤問題(1) 防潮堤の高さ

東日本大震災の復興事業において、議論、話題になっているのが防潮堤の高さの問題です。 安倍総理大

記事を読む

スポンサードリンク

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

スポンサードリンク

no image
時間をかけてはいけない罹災証明書

元旦に発生した能登半島地震の被災者のために、震災を体験し、被災者(自宅

no image
時間が解決してくれる(再建)

元旦に発生した能登半島地震の災害ニュースを見る度に、東日本大震災時の状

no image
時間でしか解決しないことがある(避難・仮設住宅)

元旦に発生した能登半島地震の災害ニュースを見る度に心が痛みますが、13

no image
時間でしか解決しないことがある(こころ)

東日本大震災から13年が経とうとしています。 震災から5年後には

日常と節目と語り部

東日本大震災から10年という節目を迎えるにあたり、前回に引き続き、私が

→もっと見る

PAGE TOP ↑