住宅再建(3) 自力再建の制約2
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最終更新日:2024/01/10
住宅再建, 震災からの復旧・復興
3. 被災地内外で危険区域以外の土地を確保し住宅建設
前号では、被災地内外での賃貸住宅(既存の建売や中古住宅購入もあり)での再建は、資金力などの制約をクリアすれば、非常に早い再建が可能になることを紹介しました。
被災地においても、賃貸住宅(既存の建売や中古住宅)が震災直後に現存していたということは、地震や津波の影響を受けなかったということであり、安心して早期の再建が可能です。
しかし、そのような物件は極めて少なく、コネなどがないと確保できない状況です。
その選択より、時間はかかりますが、被災地内外で土地を確保し、住宅建設する選択があります。
住宅建設の場合は、賃貸住宅や建売・中古住宅とは異なり、まずは更地の土地を購入し、その後に住宅建設してからですので、その分、再建の時間がかかります。
更に、同じ土地を確保し住宅再建するにしても、その場所が被災地内か被災地外かでは、再建のスピードが全然違うのです。
ふるさと・地元の愛着心などで、被災地に住宅再建する人が圧倒的に多いので、その選択での再建スピードと制約について考察します、
被災地での住宅再建においては『災害危険区域の設定】が大きく関わります。
危険区域とは、今回の東日本大震災のような巨大津波が押し寄せても、住民の生命を守るために、条例にて危険の著しい区域を災害危険区域として指定し、住宅等の建築物の建設を制限するものです。
危険の著しい区域とは?
1)100年に一度位に発生する大津波を防御できる防潮堤(場所にとっては14mほどの高さ)を作った前提で
2)1000年に一度の今回のような大震災での巨大津波は、当然ながらその防潮堤を乗り越えてくるので
3)それをコンピュータシミュレーションしてみて、津波が押し寄せると予測された(土地)を災害危険区域とし
4)住宅などの建設を制限し、危険区域では居住できないようにする。
ということです。
このことは、東日本大震災では津波が押し寄せた土地でも、高い防潮堤を作る前提で、災害危険区域から外れる場所も相当あることを意味しています。
さて、単純に被災地と言っても、被災したところもあれば、被災していないところもあります。
そのような状況で津波などで住宅を失った被災者が、被災地で住宅再建しようと考えると、
*まずは被災しても先祖代々から引き継いだ従来の土地に再建したい。
→危険区域になったら再建できない。不安が残る。
*それが無理なら、同じ行政区や隣の行政区の近所に近い土地に再建したい。
→そのような土地は少ない。
*それが無理なら、同じ学区内の土地に再建したい。
→子供を転校させたくない。なるべく今までの生活拠点の近くにいたい。
*それが無理なら、せめて今までの市町村の中で安全な土地に再建したい。
このような感じで住宅再建する土地を探すことになります。
被災した住宅(海沿い)に近いほど、土地は見つからず、また、災害危険区域なのかどうかもはっきりしないと前には進まないのです。
気仙沼市で災害危険区域が決まったのは24年7月です。
従って、被災した海沿いに住宅再建するには、震災から1年4か月ほど何もできず、それ以降に土地を確保し、住宅建設ということになります。
被災地でも、被災した住宅(海沿い)から離れて、明らかに災害危険区域以外(大震災で津波が来なかった)の安全な高台に土地を求めるのであれば、災害危険区域の指定を待たずに住宅再建を進めることができます。
しかし、そのような場所は、すぐに住宅を建てられる宅地は少なく、畑や山を造成したり、ライフラインを引き込む工事が必要になったりと、お金と時間をかける制約がでてきます。
従って、一般的な被災者は、今まで述べた自力再建には、なかなか踏み出せず、再建スピードは遅くはなりますが、行政の支援の下で再建を目指すことになるのです。
【宅地が少なく、自力再建では造成費用がネックに】
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