*

住宅再建(4) 防災集団移転促進事業(住民主導型)

公開日: : 最終更新日:2024/01/10 住宅再建, 震災からの復旧・復興

体験談初回はこちらから

4. 住民主導型の防災集団移転促進事業に参加し住宅建設

本号からは、行政の支援を受けての住宅再建になりますが、結論からすると、それを選択をした段階で早期の住宅再建は難しく、平均的には4、5年経過しての住宅再建の選択ということになります。

そもそも防災集団移転促進事業とは、震災によって津波に遭い、災害危険区域に指定され、住民の居住に適当でないと認められる区域内にある住居(住民)の集団的移転を促進するため、国が当該市町村に対し、事業費の一部補助を行い、防災のための集団移転促進事業の円滑な推進を図るものです。

更に補足しますと、国の予算にて市町村が主導的に集団移転先の土地の売買、造成、ライフラインの整備(宅地の直前まで)を整備を行い、完成した時点で、土地を売買か賃貸にて参加する被災世帯に引き渡し、そこからは個人で住宅建設を行い入居するということになります。

同じ防災集団集団移転促進事業でも、今回、考察する住民主導型と行政主導型があり、住民主導型の方が、それでも早い住宅再建の選択となり、我が家の住宅再建も、それを選択しました。

住民主導型の特徴は、
1)東日本大震災の事業としては、5世帯以上でまとまって参加すること。
2)その参加する住民が主導となって、移転先の安全な土地(危険区域外)を見つけ、その地主から市町村への土地売買への承諾を得ること。

規模としては、5世帯ギリギリの小規模な事業から、大学の街づくり研究グループなどの支援を受けながら、60~70世帯という大規模な事業まで様々です。

この事業を成功に導くポイントとしては、交渉力や調整力などを保有したリーダー的な存在にあると思います。
参加する住民の代表とそれを支えるボランティアなどのグループの存在がその事業の早期実現も含めて良否を左右すると言っても過言ではありません。

被災した沿岸部には危険区域の設定などにより、再建できる宅地はほとんどありません。
しかし、いかに今までに住んでいた土地の近くに再建できるか?を考え、危険区域から外れた土地を探すことからスタートしなければなりません。

空いている宅地は皆無ですから、畑や田んぼ、山林などが候補になりますが、地主さんが先祖代々の土地をすんなり譲ってくれるか?リーダーの交渉力が問われます。

また、早期再建を考えると、規模やその場所の特性、即ち、造成やライフライン接続の難易度(工事期間に直結)も考慮して検討を進めなくてはなりません。
大規模で山林を切り崩しての造成には相当な工事期間を要します。

前号で説明しましたが、住宅再建が具体的に動き始めたのが、災害危険区域が設定された平成24年7月以降になり、まずは、用地買収や調査・設計に約1年を費やし、それから造成を開始し早いところで1年、規模や難易度が高いところでは、2年~3年かけて造成が行われてきました。

結果的に震災直後の空白期間を含め、住民主導型の防災集団集団移転促進事業では、早いところで3年、遅いところで5年、即ち、現時点(2016年3月)で、大体の造成が完了し、事業参加の被災世帯に土地が引き渡され、現在は住宅建設ラッシュになっている状況なのです。

住民主導型の防災集団集団移転促進事業で早期再建を目指すとしたら、リーダーの元、小規模の世帯数で早期に立ち上げ、安全で造成やライフラインの接続が容易で、地主が快く譲ってくれる土地を見つけることになります。

土地を探す場合、遺跡が発掘されたり、岩盤が固かったなどにより、当初の計画から遅れてしまったケースもありますので要注意です。

【着々と進行中の我が家】

住宅進行中

(つづく)

スポンサードリンク

関連記事

住宅再建(3) 自力再建の制約2

体験談初回はこちらから 3. 被災地内外で危険区域以外の土地を確保し住宅建設 前号では、被災地内

記事を読む

震災遺構 気仙沼市のケース

気仙沼市の震災遺構としては、私の目の前に存在している被災した旧気仙沼向洋高校の校舎にすんなり決まりそ

記事を読む

no image

長引く避難生活における様々な判断(仮設住宅)

住宅再建までの充電期間の仮設住宅学校の体育館など、過酷な公共施設での避難生活から、早期に開放される必

記事を読む

住宅再建(1) 震災から5年経過しても

東日本大震災から5年経過しても・・・ 東日本大震災から5年になります。 多分、被災地以外の方

記事を読む

住宅再建(2) 自力再建の制約1

住宅再建の早い順の選択項目ごとに、制約条件やメリット・デメリットについて考察したいと思います。 1

記事を読む

防潮堤問題(3) コンクリート

私たち被災者は、好き好んでコンクリート塀に囲まれるような防潮堤を望んでいるわけではありません。

記事を読む

no image

防潮堤問題(4) 考えるスパンの違い

あくまで個人的な傾向的な見解として受け止めてもらいたいです。 被災者は行政が提示した防潮堤案を

記事を読む

長引く避難生活における様々な判断(一次避難)

西日本の災害と東日本大震災の共通点 西日本の洪水・土砂災害と東日本大震災(大津波)の共通点として、

記事を読む

震災遺構 南三陸町防災対策庁舎(4)

南三陸町の防災対策庁舎の保存問題。 これまでの経緯と、力関係と、民主主義の進め方(多数決など)を考

記事を読む

震災遺構 南三陸町防災対策庁舎(1)

『6mの津浪がきます。避難してください!』 南三陸町の職員で危機管理課に所属し、防災放送担当だ

記事を読む

スポンサードリンク

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

スポンサードリンク

no image
時間をかけてはいけない罹災証明書

元旦に発生した能登半島地震の被災者のために、震災を体験し、被災者(自宅

no image
時間が解決してくれる(再建)

元旦に発生した能登半島地震の災害ニュースを見る度に、東日本大震災時の状

no image
時間でしか解決しないことがある(避難・仮設住宅)

元旦に発生した能登半島地震の災害ニュースを見る度に心が痛みますが、13

no image
時間でしか解決しないことがある(こころ)

東日本大震災から13年が経とうとしています。 震災から5年後には

日常と節目と語り部

東日本大震災から10年という節目を迎えるにあたり、前回に引き続き、私が

→もっと見る

PAGE TOP ↑