*

防潮堤問題(1) 防潮堤の高さ

公開日: : 最終更新日:2015/03/19 防潮堤問題, 震災からの復旧・復興

東日本大震災の復興事業において、議論、話題になっているのが防潮堤の高さの問題です。

安倍総理大臣の夫人、昭恵さんが、現状の防潮堤計画に対し、疑問を投げかけ問題提起し、行動・活動していることでも話題性は十分です。

世の中一般的に、そのようなニュースが流れますと、
『自然破壊』
『税金を無駄にする公共事業』
『コンクリートの防潮堤は悪者』
というような感じになると思います。

被災地においても『必要!』 『そんな高さは不要!』との議論が交わされていました。

そこで、被災者・遺族の立場として、私個人的な意見になってしまいますが、防潮堤問題を考えてみたいと思います。

防潮堤計画を議論するにあたり、まず、どのような経緯、基準にて、計画されている『防潮堤の高さ』が決まったのかを明確にする必要があります。

未曾有の東日本大震災の大津波を教訓に、防潮堤の高さの見直しが行わることになり、国からの指針に基づき、それぞれの県が、地域・場所ごとの計画する防潮堤の高さを示しました。

国からの指針としては、
レベル1(L1)=頻度の高い津波(数十年から数百年のスパンで発生する津波のレベル)
レベル2(L2)=東日本大震災の様な1000年に一度と言われる様な発生頻度が極めて低い津波

を示し、L1に対し、防潮堤などで津波から街を防御するとの考え方が示されたのです。

それで各県が津波のシミュレーションなどをやって、各地域・場所の防潮堤の高さを算出したのですが、それぞれの地形や海底の状況などから、L1で確実に防御する防潮堤の高さとして、高いところでは15mクラス、10mクラスも多くあり、内湾などにおいても5,6mの高さが示されたのです。

この地元では、岩井崎-御伊勢浜海水浴場地域の防潮堤の高さは9.8mの計画高さが示され、隣町の小泉海岸においては14.6mの高さの防潮堤計画が示されたのです。

注目してもらいたいのは、
それらの想像を超える高さの防潮堤を作ったとしても、東日本大震災の津波が来たら、その防潮堤を乗り越え被害が生じるということです。

boucyoutei

そこで、東日本大震災の様な、L2レベルの大津波においては、住民の避難を軸に、土地利用、避難施設、防災施設などを組み合わせて、住民の生命を守ることを再優先としたまちづくりを行う。
ことが示されたのです。

そのことは、

計画された防潮堤の高さによって建設されることを前提として、まちづくりがスタートしている。

ということを、被災者以外、被災地以外の方々にも認識して頂きたいのです。

防潮堤の高さが直結している『まちづくり』の中で、被災地・被災者にとって、直接影響し、判断を迫られたこととして、

『危険区域の設定』

があります。

(つづく)

スポンサードリンク

関連記事

no image

防潮堤問題(4) 考えるスパンの違い

あくまで個人的な傾向的な見解として受け止めてもらいたいです。 被災者は行政が提示した防潮堤案を

記事を読む

住宅再建(1) 震災から5年経過しても

東日本大震災から5年経過しても・・・ 東日本大震災から5年になります。 多分、被災地以外の方

記事を読む

景勝地 岩井崎の復旧・復興

やっと観光地の復旧・復興へ   未曾有の災害からの復旧・復興には、優先順位が立てら

記事を読む

防潮堤問題(3) コンクリート

私たち被災者は、好き好んでコンクリート塀に囲まれるような防潮堤を望んでいるわけではありません。

記事を読む

長引く避難生活における様々な判断(住宅再建)

住宅再建のための的確な判断とは 今回の西日本の洪水・土砂災害と東日本大震災において、広範的な被害と

記事を読む

防潮堤問題(2) 危険区域

防潮堤の高さが直結している『まちづくり』の中で、被災地・被災者にとって、直接影響し、判断を迫られたこ

記事を読む

震災遺構 南三陸町防災対策庁舎(3)

石巻市大川小学校の保存の議論 南三陸町の防災対策庁舎を震災遺構として残すか否かの議論の参考になるの

記事を読む

住宅再建(4) 防災集団移転促進事業(住民主導型)

体験談初回はこちらから 4. 住民主導型の防災集団移転促進事業に参加し住宅建設 本号からは、行政

記事を読む

被災地への旅行についての考察

被災地への旅行者の本心!? 震災から5年になろうとしています。 被災地で宿泊施設(コテージ)を開

記事を読む

震災遺構 南三陸町防災対策庁舎(1)

『6mの津浪がきます。避難してください!』 南三陸町の職員で危機管理課に所属し、防災放送担当だ

記事を読む

スポンサードリンク

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

スポンサードリンク

no image
時間をかけてはいけない罹災証明書

元旦に発生した能登半島地震の被災者のために、震災を体験し、被災者(自宅

no image
時間が解決してくれる(再建)

元旦に発生した能登半島地震の災害ニュースを見る度に、東日本大震災時の状

no image
時間でしか解決しないことがある(避難・仮設住宅)

元旦に発生した能登半島地震の災害ニュースを見る度に心が痛みますが、13

no image
時間でしか解決しないことがある(こころ)

東日本大震災から13年が経とうとしています。 震災から5年後には

日常と節目と語り部

東日本大震災から10年という節目を迎えるにあたり、前回に引き続き、私が

→もっと見る

PAGE TOP ↑