*

防潮堤問題(2) 危険区域

公開日: : 最終更新日:2015/03/19 防潮堤問題, 震災からの復旧・復興

防潮堤の高さが直結している『まちづくり』の中で、被災地・被災者にとって、直接影響し、判断を迫られたこととして、『危険区域の設定』があります。

これはどういうことかというと、L1の津波を守る防潮堤を作ったとしても、東日本大震災の大津波を想定したL2レベルの津波においては、防潮堤を津波が乗り越えてしまう。

それでも生命は守りたい。

そこで、L1のレベルを防御する防潮堤を作った前提で、それでも東日本大震災のレベルの津波が到達してしまう土地に、住宅や公共施設を建てることを制限させるのが危険区域の設定です。しかし、先祖代々、引き継いで守ってきた土地を手放すには抵抗がある被災者も存在しており、中には自費にて危険区域の高さ以上に嵩上げし、その土地に住宅再建を果たした被災者もいるのです。

また、真逆な立場の被災者も存在しています。
L1の津波を守る、非常に高い防潮堤を作った前提でのシミュレーションですから、東日本大震災では津波によって家が被災したところであっても、危険区域からは外され、

『L1の津波を守る、非常に高い防潮堤を作ったら、その場所は東日本大震災の津波(L2)でも波は来ないので、その土地に再建しても良いですよ!』
なのです。

不安なので高台に移転しようとしても、危険区域から外れた土地を行政は面倒見てくれませんし、再建の際の支援(利子補給など)にも格差が生じています。

即ち、不安でも、被災した宅地に、既に再建し生活している人、再建を試みようとしている人がいるのです。

その前提には、計画されている、L1の津波を守る非常に高い防潮堤が作られた前提で、危険区域から外れ安全との見解から進めているのであって、その後に防潮堤の高さを低くしたり、危険区域の見直しをされては、安心・安全が担保されない状況になってしまいます。

防潮堤の高さは、新たなまちづくりにおいて、危険区域の設定として、被災者の生活再建に直結しているということを、是非知っていただきたいのです。

さて、話は変わりますが、防潮堤の見直しは被災地だからこそ、国の復興予算によって成されますが、海洋プレートに囲まれている日本において、東日本だけでなく、津波のリスクが高い地域は多く存在しています。

他人事になって頂きたくないのは、それらの地域の見直しされていない防潮堤は、東日本大震災レベルの大津波(L2レベル)どころか、
L1レベルの津波(数十年、数十年から数百年のスパンで発生する津波)でも、津波が防潮堤を乗り越え、沿岸部などのリスクが高い地域に立っている宅地や、万一、そこに人が居ればな流される可能性があるのです。

この状況は、自然災害に対し『防災』とか出来るわけがありません。
せいぜい、最低限の減災として、迅速に避難し人命を守る、という減災レベルしかできません。

震災前の被災地と同じような環境やリスクが高い地域に在住している方々には、私たちのようにならないためにも、『減災』を意識し、最低限、人命を守るための避難行動や避難準備を徹底してもらいたいものです。

【大谷海水浴場に計画されている防潮堤の高さ】

teiboutakasa1

この海抜9.8mの防潮堤を作ったとしても東日本大震災レベルの大津波を防ぐことは出来ず、浸水域は危険区域として 設定され、住宅などの建設が制限されます。
逆に東日本大震災で被災した土地でも、計画された防潮堤を作ることにとって、東日本大震災レベルの津波でも浸水は免れるところは危険区域から外れ、住宅再建が可能になるのです。

スポンサードリンク

関連記事

防潮堤問題(3) コンクリート

私たち被災者は、好き好んでコンクリート塀に囲まれるような防潮堤を望んでいるわけではありません。

記事を読む

住宅再建(5) 災害公営住宅での生活再建

体験談初回はこちらから 5. 災害公営住宅に申し込み賃貸にて生活再建 前回は、住民主導型の防災集

記事を読む

震災遺構 南三陸町防災対策庁舎は県有化に!

震災遺構として保存の是非で町が二分していた問題ですが、2015年6月30日、南三陸町町長が県の県有化

記事を読む

震災遺構 気仙沼市のケース

気仙沼市の震災遺構としては、私の目の前に存在している被災した旧気仙沼向洋高校の校舎にすんなり決まりそ

記事を読む

震災遺構 南三陸町防災対策庁舎(1)

『6mの津浪がきます。避難してください!』 南三陸町の職員で危機管理課に所属し、防災放送担当だ

記事を読む

震災遺構 南三陸町防災対策庁舎(2)

南三陸町の防災対策庁舎の震災遺構として保存するか否かの問題について、今後の推移について冷静に考察して

記事を読む

防潮堤問題(1) 防潮堤の高さ

東日本大震災の復興事業において、議論、話題になっているのが防潮堤の高さの問題です。 安倍総理大

記事を読む

no image

長引く避難生活における様々な判断(仮設住宅)

住宅再建までの充電期間の仮設住宅学校の体育館など、過酷な公共施設での避難生活から、早期に開放される必

記事を読む

住宅再建(6) 遅すぎる住宅再建による変化

体験談初回はこちらから 6. 市主導型の防災集団移転事業に参加し住宅建設 前回に引き続き、もう一

記事を読む

住宅再建(3) 自力再建の制約2

体験談初回はこちらから 3. 被災地内外で危険区域以外の土地を確保し住宅建設 前号では、被災地内

記事を読む

スポンサードリンク

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

スポンサードリンク

no image
時間をかけてはいけない罹災証明書

元旦に発生した能登半島地震の被災者のために、震災を体験し、被災者(自宅

no image
時間が解決してくれる(再建)

元旦に発生した能登半島地震の災害ニュースを見る度に、東日本大震災時の状

no image
時間でしか解決しないことがある(避難・仮設住宅)

元旦に発生した能登半島地震の災害ニュースを見る度に心が痛みますが、13

no image
時間でしか解決しないことがある(こころ)

東日本大震災から13年が経とうとしています。 震災から5年後には

日常と節目と語り部

東日本大震災から10年という節目を迎えるにあたり、前回に引き続き、私が

→もっと見る

PAGE TOP ↑