長引く避難生活における様々な判断(住宅再建)
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震災からの復旧・復興
住宅再建のための的確な判断とは
今回の西日本の洪水・土砂災害と東日本大震災において、広範的な被害という面では共通点が多い一方、被害の状況については、大津波と洪水・土砂災害による傾向的な違いがあり、住宅再建をどのようにするかの判断も異なっていくと思います。
しかし、長引く避難生活の中でも、前向きに普段の生活に戻るための、住宅再建方法を的確に判断していかなければなりません。
私の経験から『的確な判断』について述べたいと思いますので、少しでも参考になれば幸いです。
- 災害直後の判断は的確でない場合があります。どうしても、災害直後はショックの大きさなどから、冷静な判断がなされないケースが多々あります。私にも今考えれば、当時の行動を後悔したり反省したケースがあります。避難生活や仮設住宅生活の苦しさから回避しようと、行政の支援を受けずに危険な場所に再建したり、多額の費用をかけないように注意すべきです。
- 基本は安心・安全な場所への再建です。東日本大震災の場合は、100年周期レベルの津波は防潮堤で守り、1000年レベルで発生する津波では、高くした防潮堤でも乗り越えてくるので、その浸水予想地域は危険区域として、住宅は立てられない、即ち、先祖代々の土地であっても、半強制的に安全な場所に再建を促されました。行政が将来に向けて、減災・防災の対応をどのようにする予定なのか?を見極めて判断しないと、再建したものの再び災害に遭うリスクが高い状況に陥る可能性があります。
- 災害前の生活に戻りたいとの当たり前の感情が優先されます。しかし、将来を見据えて家族・親族や必要に応じて支援団体などとも話し合い、無理のない資金計画や安全・安心の担保などを考慮して判断すべきです。
住宅再建の選択肢
洪水・土砂災害の住宅再建方法の選択は、東日本大震災とは異なった面もあると思いますが、参考にできる面も多々あると思います。
選択によって、その特徴やどのようなリスクがあるか、留意点などをまとめてみたいと思います。
被災した住宅を補修して再建
西日本の洪水・土砂災害の被災状況において、東日本大震災との大きな違いは、
『被災しても住宅は残っているので補修や改装して再建できる』
ケースが多いということがあると思います。
東日本大震災の大津波の場合、数メートルの浸水被害だったとしても、津波の押し波、引き波の威力によって、住宅が基礎だけ残して流失する被害が圧倒的でした。
西日本の洪水・土砂災害においても土石流などでは同様の家屋が多い一方、平地などの堤防決壊や氾濫のケースでは、水位がだんだんと増し、2階まで浸水するも住宅はそのまま残っているケースが多くあったと思います。
そうなると、被災住宅の補修や改装が選択となると思います。
その際、やはり、再び災害に遭うリスクがどうか?の検証が必要になります。行政が今回の災害を受け、そのような防災・減災政策をとるのか? その結果、ハザードマップの危険区域がどのように変わるか? などを確認してからの判断が重要です。
また、行政支援の状況確認も重要です。
通常、住宅再建支援(生活再建支援金や住宅再建時の利子補給など)は、全壊や大規模半壊でないと支援が受けられません。
1階が進水した程度では半壊レベルで支援はありません。
しかし、行政によっては市町村が国に半壊での支援を求めたり、市町村単独で支援を検討したりしているので、その状況も判断材料にした方が良いです。
被災地外で生活している親族と同居による生活再建
一番、手っ取り早い再建の一つです。
しかし、すでに引退し、年金生活の老夫婦や一人暮らしの親が、都会の子供たちを頼るかどうか。
詳細はこちら
被災地内外で被災していない賃貸住宅で生活再建
若者の被災地外での生活再建の一つですが、2世帯の分離などの問題が出てきます。
詳細はこちら
被災地内外で危険区域以外の土地を確保し住宅建設
東日本大震災の場合は、100年周期レベルの津波は防潮堤で守り、1000年レベルで発生する津波では、高くした防潮堤でも乗り越えてくるので、その浸水予想地域は危険区域として住宅は立てられません。
洪水・土砂災害の場合、危険区域としての建設制限がどうなのか?もし、無いとしても、これからの災害リスクを自ら判断し、安全な土地を探す必要があります。
詳細はこちら
防災集団移転促進事業に参加し住宅建設
洪水・土砂災害において、防災集団移転促進事業が適用されるかどうかは分かりません。
もし、適用するときは参考にして頂きたいです。
防災集団移転促進事業には、住民主導型と行政主導型があります。
地域の再結束、コミュニケーション維持を目指すには、手間と時間はかかりますが、住民主導型が良いと思います。
住民主導型の防災集団移転促進事業の詳細はこちら
行政主導型の防災集団移転促進事業の詳細はこちら
災害公営住宅に申し込み賃貸にて生活再建
これも適用されるかどうかは分かりません。
低所得者世帯を対象としているので賃料は安い、とは言っても被災前は自宅生活で賃料が発生していない状態からの変化は良く考えなければなりません。
高所得世帯が利用すると、普通の民間賃貸住宅の家賃と変わらない位の賃貸料を支払う可能性があります。
詳細はこちら
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