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住宅再建(5) 災害公営住宅での生活再建

公開日: : 最終更新日:2024/01/10 住宅再建, 震災からの復旧・復興

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5. 災害公営住宅に申し込み賃貸にて生活再建

前回は、住民主導型の防災集団移転促進事業に参加し住宅建設について説明しましたが、行政に支援を受けるにしても、被災者住民が主導となって、組織を形成し、安全な土地を見つけて地主と交渉し移転先を見つけるという、住民の行動があって再建が実現するケースでした。

それに比較し、今回、および次回の、
5. 災害公営住宅に申し込み賃貸にて生活再建
6. 市主導型の防災集団移転事業に参加し住宅建設
は、住民は待ちのスタンスで、行政が主導して災害公営住宅または防災集団移転事業の工事を行い、公募によって被災者の再建を後押しするものです。

当然ながら、これまで説明してきた、被災者の自力再建や被災者が主導しての防災集団集団移転事業の参加状況を把握した上で、高齢世帯などにおいてはそれらの選択は困難であり、行政の支援に依存しなければ再建できない被災世帯も多く存在します。

それらの被災世帯がどの位いるのか?
どの地区に再建を希望するのか?
どのような選択(公営住宅か防災集団移転事業に参加か)を希望するのか?
などをアンケートなどにおいて、世帯数を把握し、希望する地区の土地を探したり取得したりし、計画図を作成して着工することになります。

したがって、自力再建や行動して防災集団移転事業に参加した世帯に比べると、どうしても『待ち』の状態になってしまうので、生活再建のスピードは遅くなってしまう傾向にあるのです。

それでも、災害公営住宅の場合は、住宅の完成まで行政が行い、被災者は完成すれば引っ越しが可能なので、造成が終わり住宅地が完成した段階で引き渡され、それから自ら住宅の建設を始めなければならない市主導型の防災集団移転事業よりは、早く再建できる傾向があります。
しかし、場所や規模、着工時期などによっては、逆転するケースもあります。

さて、災害公営住宅は公営住宅ですから、あくまで賃貸住宅に属します。
低所得者(高齢者夫婦など)で住宅建設が困難であったり、余生や後継者の関係などで住宅建設を諦めなければならない被災者などが選択します。

低所得者の救済を主な目的にしていますから、世帯全体の所得が多い世帯が選択すると、所得によって賃貸料が決まっているので、高所得世帯では、普通の民間賃貸住宅の家賃と変わらない位の賃貸料を払わなければならないことになります。

また、低所得世帯では賃料が安いといっても、震災前は自宅に暮らしていて賃料などはなく、被災後の仮設住宅においても賃料はかからなかったので、公営住宅に入居によって、初めて賃料という追加の支出(経費)が発生する世帯も多いのです。

高齢で年金生活の低所得世帯においては、安いといってもその賃料の支払いが重荷となり、災害公営住宅への入居をも諦め、仮設住宅で一生暮らしたいとの希望も出てくることになるのです。

災害公営住宅の種類としては、地域や世帯数などに応じて、都市型の集合住宅(マンションみたいな住宅)であったり、地方では長屋タイプがあったり、戸建て住宅があったりと、色々な選択ができます。

しかし、傾向をみると市街地の集合住宅が、利便の良さが魅力となり、公募数を上回る申し込みがあり、抽選での決定という後味が悪い決定方法になった住宅もあれば、逆に地方の方では、公募数に申し込み数が満たさず、空き家の恐れが生じ、従来の老朽化した公営住宅に住んでいる住民の移動を考えたりと、なかなか思うようにはいかない事情もあるようです。

【建設中の戸建て公営住宅】

koueizyutaku

(つづく)

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