被災地への旅行についての考察
公開日:
:
最終更新日:2016/03/12
震災からの復旧・復興
被災地への旅行者の本心!?
震災から5年になろうとしています。
被災地で宿泊施設(コテージ)を開業してから、沢山のお客様と触れ合うことができました。
チェックアウト時に世間話をする機会もあるのですが、被災地以外から被災地に旅行するご家族やグループなどから、被災地への旅行に関する心境をお聞きすることがあります。
『復興途中の被災地にボランティアならまだしも、遊びや観光の目的で訪れていいのだろうか?ためらいがありました。』
『少しでも被災地にお金を落とす(使う)ことで、復興につながるのでは!と、思いきってきました。』
『子供達に被災地のありのままを見てもらい、何かを感じてもらいたい、何かを伝えたい、との思いできました。』
多くの旅行者は、このような心境で来ていると思われます。
まだ来て頂ければ良いのですが、
『遊びや観光を目的で訪れていいのだろうか?』
の思いから、ためらって、行きたくても未だに被災地を訪れていない方々も沢山いるのではないか?と感じています。
被災者の立場で、そのような思いを抱いている方々に、旅行者の本心とは離れて、被災者の本心を述べたいと思います。
ボランティアさんの激減について
被災地へ訪れるボランティアさんは、時間の経過とともに減少し続け、各市町村社会福祉協議会に設置された災害ボランティアセンターが、1か月当たりに受け入れた東北3県でのボランティア人数は、ピークだった2011年5月の182,400人から、2015年7月には5,000人にまで減少しているそうです。
ピーク時に比べ、現在では数パーセントの人数に激減していることになります。
私はある意味、仕方ないと言いますか、当たり前のことだと思っています。
誤解してもらいたくないのですが、ボランティアが不要になったとは思っていません。
地域によっては、例えば福島県の被災地は、放射線量の影響で今まで手付かずの地域が、放射線量が下がり立入り禁止が解除、これから復旧・復興に向けて、ボランティアのニーズが高い被災地も多くあると思います。
また、ハード的なボランティアから、高齢化社会に対応したソフト的なボランティアのニーズが高まるなど、まだまだボランティアさんのニーズが必要なことも確かだと思います。
でも、被災地の復旧・復興、生活再建が、すこしずつでも進んでいることは事実であり、このことは『普通の生活』に戻りつつあるのです。
『普通の生活』に戻りつつあるということは、震災直後のボランティアさんの人数自体が普通ではないことだと思うのです。
被災者は前を向いて歩んでいる
被災地に旅行するにあたり、旅行者が出会う可能性が高い被災者(被災地でも全てが被災者とは限りません)は、私のようにサービス業であったり販売業であったり、外で仕事している農漁業者であったり、復旧・復興に係る仕事従事者であったり。
とにかく、そのような人々は、それぞれのスピードの違いはあるにしても、ポジティブに前を向いて歩んでおり、旅行者はそのような被災者に出会う可能性が高いのです。
(中には震災のダメージが大きすぎてネガティブになり、家にこもったりする被災者の存在も否定はしませんが、旅行者はそのような方々に会う可能性は低いと思います)
そして、そのような出会う可能性が高い被災者は、
とにかく地元が大好きです。
相当なダメージを受けても、海を含めて地元の自然や人柄や産業を自慢します。
良く来てくれた!って歓迎します。
従って、旅行者が出会う被災者が、旅行に来ることを拒んでいたり、楽しむこと、観光することを嫌がることは、ほとんどいないと思って間違いないです。
(仕事の邪魔をしたり、限度を越えるマナー違反しないことが前提ですが)
普通の観光地として(プラスアルファ被災地体感)
被災者は『普通の生活』に戻そうと前を向いて歩んでいます。
従いまして、被災地に旅行する人々には、『普通の観光地』として扱って頂き、楽しむために、思い出づくりに、来てもらいたいのです。
ボランティアさんの激減は、先行して『普通』に戻ってしまいました(苦笑)。
そうなりますと、震災以前の観光客に来ていただけないと、被災地の観光地は『普通』に戻っていないことになります。
『普通の観光地として来ていただきたい!』
普通に楽しんでもらい、美味しい食材を食べてもらい、思い出をつくり、ファンとなってもらって何度も遊びにきてもらいたい。
そして、『被災地』は、普通の旅行のプラスアルファとして、子供達への体感、減災・防災への教訓、復旧・復興の確認などの副産物になれば良いと思っています。
それが、被災地の復旧・復興につながっていくと思うのです。
『被災地』を返上するには、まだまだ相当の年月がかかるのですから。
【景勝 岩井崎で再開した天旗まつり】
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