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防潮堤問題(3) コンクリート

公開日: : 最終更新日:2015/03/22 防潮堤問題, 震災からの復旧・復興

私たち被災者は、好き好んでコンクリート塀に囲まれるような防潮堤を望んでいるわけではありません。

住宅を建てられるかどうかの基準となる、『危険区域』の設定に直結する、防潮堤などの津波を防御する構造物の高さを容易に変更することは難しいと思います。

中には、被災者を含めて地域全体で防潮堤の高さを問題にし、結果的に高さを下げたり、新方式を採用したりできた地域もありますが、その前提には、守る物がない(全世帯が移転予定)とか、想定する津波のシュミレーションを見なおしたとか、新方式により下げられるとか、安心・安全は担保した上で行政と合意しているケースですが、そうは多くはありません。

従って、防御する構造物の高さは必要になりますが、構造物がコンクリートであることにこだわっているわけではありません。

例えば、防潮堤の高さまで、被災地全体を盛土などで嵩上げし、更には防潮林などの緑化にて同じような防御だ出来ればそれでも良いのです。
その方が、嵩上げにより人の目線が高くなり(計画する防潮堤の高さ)、海が見えなくなってしまうという不安材料も払拭できるメリットもあります。

しかし、国の予算や復興集中期間(5年)の設定などの課題から、行政から出されてくる提案はコンクリートでの巨大な防潮堤ということになっているが現実です。
市街地なら全体の嵩上げの選択もあるかもしれませんが、農村・漁村地域になるほど、その実現性は低くなり、コンクリートによる防潮堤の選択になっていきます。

でも、被災地では、その行政の提案をそのまま鵜呑みしているわけではありません。

三陸復興国立公園として景観を考慮、例えば、海水浴場などの砂浜を守るために、防潮堤をセットバック(陸側に移動)したり、緑化を考慮したり、また、漁業の作業効率を悪くならないような配慮や避難ルートを考慮するなど、短期間の中で妥協点を探っているというのが実情です。

この短期間での妥協が問題と言えば問題なのかもしれません。

しかし、被災者にとって、早期の生活再建に直結していることをご理解していただきたいのです。

被災地と言っても、全ての住民が被災しているわけではありません。
被災地であっても、高台に住んでいて震災前と変わらない生活をしている人は沢山います。
実際には、被災者より、その人達のほうが多いのです。

被災者として違和感を感じるのは、あくまで傾向の話しですが、被災地でも被災していない人たちが、防潮堤が高すぎるとか、税金の無駄遣いとか、自然破壊とか、ある意味、理想を論じることです。
そして、第三者(専門家や報道機関)が火に油を注いでいる様に感じます。

理想論も大事かもしれませんが、被災地に残る被災者には、

『私達、被災者には直近の安心・安全な生活(再建)が最優先!』

という、考えるスパンが短いこともご理解いただきたいのです。

 

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【早期に住民との合意成形によって先行して建設中の9.8mの防潮堤(大谷地区)】

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