正常化バイアスと災害について
最近良く耳にする正常化バイアス
最近、ニュースや情報番組で良く耳にする『正常化バイアス』
東日本大震災の時にも良く聴いた言葉です。
要するに、災害による重大な被害、犠牲者が出ると、良く耳にする言葉であることが分かります。
正常化バイアス(normalcy bias)とは、心理学の用語で、人が予期しない事象に出くわしたとき、「ありえない」という先入観や偏見(バイアス)が働き、物事を正常の範囲だと自動的に認識する心の働き(メカニズム)を意味するそうです。
そうしないと、いちいち過敏に反応していては疲弊してしまうために、ある程度の限界までは、正常の範囲として処理する心のメカニズムが備わっていると考えられるています。
正直に暴露しますと、我が家族も、その働きが強かった・・・。
結果的に大きな犠牲を出してしまったことになったのです。
私の父は『我が家まで津波は来ない。来たら気仙沼は終わる』と言い切っていました。
それが、現実になってしまったのです。
私は、たまたま東日本大震災の発生当時、サラリーマンとして高台の会社(工場)にいたので助かったまでです。
もし、自宅に家族でいたなら私も犠牲になっていた確率は非常に高いです。
なぜなら、私としても親父同様に、『我が家は大丈夫』と思っていた本人ですから、あんな大地震で遭ったにもかかわらず、正常化バイアスが働き、安全な高台までの避難をしなかったと思うのです。
正常化バイアスと年齢による経験
正常化バイアスが働いてしまう傾向として、高齢になるほど強くなるようです。
今回の西日本豪雨被害においても、息子が避難を呼びかけても、父親が『うちは大丈夫!』と言うことを聞かず、家の中まで水が押し寄せてから避難を開始し、その時には胸ぐらいまで浸水し、危険な状態での避難だったというニュースが流れていました。
『考えが甘かった・・・』
インタビューの言葉です。
経験して初めて後悔するのです。
犠牲者の多くは自宅の中で亡くなっていたとのニュースもありました。
後悔する暇もなく、亡くなった人が多くいるのです。
なぜ、年齢が増すことで正常化バイアスが強くなるのでしょうか?
それは、年齢と共に重ねてきた経験によって、正常化バイアスも蓄積されていくのではないかと思うのです。
岩手県釜石市では、東日本大震災の大津波でも小学校の犠牲者は極めて低かったとのこと。
子供として経験が少ない上に、避難訓練が充実していたために、とにかく逃げることを最優先し、その言動・行動に誘発されて助かった高齢者も多くいたと聞きました。
実際、私の親戚の叔母も、動くつもりはなかったらしいが、孫の言動から一緒に避難し助かり『孫に助けられた・・・』と語っていました。
一方、宮城県石巻の大川小学校では、生徒より正常化バイアスが強かった先生方の判断の遅れが大惨事につながってしまったと思われます。
- 何度も津波注意報や警報を経験したが、数10㎝程度の津波しか来ない。
- 台風の直撃を何度も受けたが、我が家は大丈夫だった。
- 大雨警報などで避難勧告・避難指示が出たが、我が家は大丈夫だった。
このような経験を繰り返して蓄積していくことで、自然を相手に、人間の微々たる経験による正常化バイアスで勝とうとするのが大きな間違いです。
正常化バイアスへの対応は?
経験以外にも、予知しない事象に遭った時に、『おびえて動けなかった』『パニックになった』結果から、大丈夫だろう、という正常化バイアスが働くケースもあります。
年齢と共に正常化バイアスが強くなる傾向に打ち勝って、減災・防災につなげるにはどうしたらよいでしょうか?
それには、意識の変革と訓練だと思います。
そして、それには、年齢が異なる家族や親族などが一緒になって検討することだと思います。
まずは、我が家・実家は大丈夫なのだろうか?災害のリスク度合いはどうなの?
国土交通省が発信している『ハザードマップポータルサイト~身のまわりの災害リスクを調べる~ 』などで調べてみましょう!
土交通省ハザードマップポータルサイト~身のまわりの災害リスクを調べる~
はこちらから
もし、危険区域内などでリスクが高いと判断したときは、西日本豪雨被害では洪水ハザードマップの想定浸水域と今回の実際の浸水域がほぼ一致し、大丈夫と思って自宅にいた人に多くの犠牲者が出た、という事実を全員で周知しましょう!
そして、正常化バイアスが強くなく、訓練などを行っている子供たちの意見を尊重しながら避難計画や避難訓練を行いましょう!
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