住宅再建(2) 自力再建の制約1
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最終更新日:2024/01/10
住宅再建, 震災からの復旧・復興
住宅再建の早い順の選択項目ごとに、制約条件やメリット・デメリットについて考察したいと思います。
1.被災地外で生活している親族と同居による生活再建
高齢化社会、地方で顕著な傾向としては、息子たちが都会に出て家庭を築き、老夫婦や一人親のみが実家を守り生活しているケースは、被災地でも例外ではありません。
地方の人口が減少し、都会に集中している理由のひとつではないでしょうか?
そのような家族構成の中で、地方が大震災に遭ってしまい、家財を失った場合の生活再建が早い選択は、被災していない都会の息子たちと同居したり、その近くの住居に引っ越すことが一番手っ取り早い選択です。
ところが、一時的な避難先として活用したとしても、恒久的な生活再建拠点として選択することは、いろいろな制約があり難しいです。
まずは、仕事を持っている人々は、生活のためにも、その場所で仕事を継続しなければならないこと。
高齢になるほど、再就職は難しいことから、その場での再建を目指すケースが多いのです。
私の場合も、息子、娘が都会で就職しており、特に息子の宿舎には部屋も余っている状況なので、同居による生活再建の選択もあったとは思いますが、当時はサラリーマンとして会社に勤めていましたので、その仕事を投げ出すわけにはいかず、地元での再建を目指しました。
制約は仕事だけではありません。
すでに引退し、年金生活の老夫婦や一人暮らしの親が、都会の子供たちを頼るか?
というと、中には頼って同居による生活再建するケースもありますが、ほとんどの場合は地元に残り、不自由な避難生活や狭い仮設住宅での生活が長引いたとしても地元での生活再建を目指す選択が圧倒的です。
それは、高齢になるほど、被災地であったとしても、その地元で長く生活してきた実績といいますか、郷土愛、コミュニティなどを大事にしており、また、都会生活などの極端な生活環境が変わってしまうことを容認できないということだと思います。
強制的に、または説得・納得して、そのような生活再建を選択したとしても、環境変化に馴染めないストレスや引きこもりなどから、体調を崩したりするリスクを背負うことも認識しておく必要があります。
鮭が生まれた河に帰ってくるように、震災直後は『どうやって生まれ育った場所に早期に再建できるか?』しか、私は考えつきませんでした。
動物の性的な行動も残っているのかもしれません。
2.被災地内外で被災していない賃貸住宅で生活再建
賃貸住宅での再建を選択する場合、被災地か被災地外かでは、制約が全然ちがいます。
何せ、被災地では余っている土地や住宅が皆無に近い状況なのです。
従って、実現性が高いのは被災地外での賃貸住宅(既存の建売や中古住宅購入もあり)での再建です。
しかし、前項の郷土愛、コミュニティを重視し地元に残ることを優先する場合は選択から外れます。
ところが、老夫婦と息子夫婦など2世帯で住んでいた家族が、離れ離れになり、結果的に若者(息子家族など)が被災地を離れ、被災地の著しい人口流出という問題に発展しています。
世代によって、前述した地元への愛着心、執着心、コミュニティ重視の度合いが違う傾向があり、また、それだけではなく、勤めていた会社が被災し解雇(再建までの一時的なケースも含む)されたりしますと、息子夫婦などは、幼い子供たちを育てなければならないなど、生活を守るために、被災地以外の都市部に移住、再就職、子供たちの転校となるケースが多々ありました。
なにせ、震災直後の被災地とは異なり、都市部には仕事や住居は沢山あるのですから・・・。
その時は、一時的な暫定的な避難生活の選択と思って行動したケースも多いと察します。
しかし、時間の経過と共に、『住めば都』といいますか、仕事は順調に軌道に乗り、正社員になれたとか、やりがいにつながったり、その地域のコミュニティも確立され、子供たちは新しい学校に馴染み、友達も沢山できたり・・・。
その結果、一時的・暫定的が、そのまま恒久的な生活再建と位置付ける変化が生じ、結果的に早期の生活再建の選択となったケースが多々あります。
また、若い家族の中には、被災地以外から嫁いできた嫁にとっては、嫁ぎ先の郷土愛よりも、震災の恐怖心が勝り、家族会議の末に、被災地から離れるケースもあります。
被災地内で、被災していない賃貸住宅や既存の建売や中古住宅購入しての早期生活再建を目指すことは、そう容易なことではありません。
そのような案件には当然ながら応募が殺到しますが、不動産屋や大家にコネクションを持っていたり、お金持ちが『金にものを言わせて』確保したりとか、そのような方々に占領され、一般的な被災者が手に入れることは困難です。
【工事関係者と身内だけのささやかな上棟式】
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