時間が解決してくれる(再建)
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最終更新日:2024/01/26
被災者・遺族として震災体験からの教訓
元旦に発生した能登半島地震の災害ニュースを見る度に、東日本大震災時の状況がフラッシュバックし心が痛みます。
震災を体験し、被災者(自宅流失)・遺族(両親と妻を失う)となってしまい、復旧・復興のプロセスを体感し生きてきた私に今できることは!?
最大24地区3345人に上った孤立集落が実質的に解消されたとのニュースが流れ良かったと思っています。
震災発生直後は、過酷な環境下で精神的にも甚大なダメージを受け、とにかく生きることに必死での避難生活からスタートし、時間と共に改善に向かい、1次避難から2次避難、支援物資の充実、ライフラインの地道な復旧、仮設住宅への入居と、少しずつではありますが、心に余裕が出てきます。
そうすると『今生きるためには』の直近の考え方から、『今後の生活再建、住宅再建をどうするか?』と将来に向けて考えたくなると思いますが、どのような再建方法が選択肢としてあるのか?、選択によってかかる時間がどのように違うのか?、行政の支援があるのか?それぞれの選択によるメリット・デメリットは?
何も分からないと不安が増すばかりだと思います。
そこで、東日本大震災で再建方法を選択し、実際に再建を果たし、他の選択での再建を見聞きした私だからこそ体系的にまとめ、少しでも参考になればと思い発信します。
注意していただきたいことは、あくまで、東日本大震災での再建であって、特に行政支援が関与する再建方法では、能登半島地震の再建には当てはまらない、逆に東日本大震災ではなかった支援策での再建も出てくるかも知れませんので、行政からの情報には逐次収集する必要があります。
以降は、住宅再建の時間が早い傾向の順で説明します。
自立再建
行政の支援は経験上時間がかかりますが、時間優先で早急な生活再建として自立再建について説明します。
1.被災地外で生活している親族と同居等による生活再建
息子たちが都会に出て家庭を築き、老夫婦や一人親のみが実家を守り生活しているケースでの自立再建策として、子供等の家庭に同居したり、近くの住居に引っ越す選択です。
一番早い再建の選択になると思います。
しかし、郷土愛や地域コミュニティが強く、実家を守ってきた方々が引っ越すかというとそう簡単ではありません。
2.被災地内外で被災していない賃貸住宅で生活再建
被災地に比べ、遠くなりますが被災地外での賃貸住宅での生活再建も、賃貸住宅を見つけやすく早期に生活再建を果たす可能性があります。
被災地で2世帯住宅で住んでいた家族が、別々な再建選択としてのケースでも考えられます。
一時的な暫定的な避難生活の選択と思って行動した結果が、最終的な再建になるケースもあります。
一時的な暫定的な避難生活の選択として行動する場合は、賃貸住宅を探す場合、大家さん等に『みなし仮設住宅』として登録するつもりがないか?登録されている賃貸住宅か?を確認した方が絶対良いです!
ある期間、仮設住宅扱いとして賃料は無料で生活できます。みなし仮設住宅については次のブログを確認してください。
以上の自立再建の詳細については次のブログを確認してください。
3. 被災地内外で危険区域以外の土地を確保し住宅建設
東日本大震災では危険区域(今後の津波で生命を守るために住宅等の建築物の建設を制限)が設定され、今まで住んでいた所に再建したくても再建できない区域ができたので、被災地での住宅再建が遅れた要因になりました。
能登半島地震ではどうか?もしかすると津波というより、地質等の影響で『液状化現象』によって全壊や大規模半壊が多かった地区が、もしかすると指定される可能性がありますので行政の確認が必要です。
被災地もしくは被災地に近いほど、土地を確保するのが難しく、また、畑や山を活用するにしても、造成やライフラインの引き込み工事などの負担が発生し、費用と時間がかかることになります。
行政の支援として【がけ地近接等危険住宅移転事業】という制度がありますが、私は詳しくないので行政に確認し、少しでも再建費用を抑えることも検討した方が良いと思います。
以上、土地を確保し住宅再建の詳細については次のブログを確認してください。
行政の支援を受けての再建
4. 住民主導型の防災集団移転促進事業に参加し住宅建設
以降、行政の支援を受けての住宅再建になりますが、結論からすると、それを選択をした段階で早期の住宅再建は難しく、東日本大震災の場合、平均的には4、5年経過しての住宅再建の選択になりました。
規模が違いますので、能登半島地震では、それ以上の時間がかかるとは思いませんが、それでも数年単位で考えなければなりません。
最近のニュースで、仮設住宅の建設がスタートし、仮設住宅に入居できる期間が原則1年とし最長で2年間と流れていますが、東日本大震災のように伸びる可能性が高いと思っています。
延長せずに全ての被災者の生活・住宅再建が終われば良いのですが・・・。
防災集団移転促進事業とは、国の予算にて市町村が主導的に集団移転先の土地の売買、造成、ライフラインの整備(宅地の直前まで)を整備を行い、完成した時点で、土地を売買か賃貸にて参加する被災世帯に引き渡し、そこからは個人で住宅建設を行い入居するしくみです。
私は住民主導型の防災集団移転促進事業に参加しましたが、私たちもそうですが、大学の街づくり研究グループなどの支援を受け、行政との交渉や土地の交渉・確保などがあり、リーダーの力量が問われますし、東日本大震災では5世帯でしたが、通常は10世帯以上がまとまって参加することが条件になります。
以上、住民主導型の防災集団移転促進事業の詳細については次のブログを確認してください。
5. 災害公営住宅に申し込み賃貸にて生活再建
住民は待ちのスタンスで、行政が主導して災害公営住宅の工事を行い、公募によって被災者の再建を後押しするものです。
高齢世帯などにおいては行政の支援に依存しなければ再建できない被災世帯も多く存在しており、その選択肢になります。
どの地区に再建を希望するのか?
どのような選択(公営住宅か防災集団移転事業に参加か)を希望するのか?
などをアンケートなどにおいて、世帯数を把握し、希望する地区の土地を探したり取得したりし、計画図を作成して着工することになり、どうしても『待ち』の状態になってしまうので、生活再建のスピードは遅くなってしまう傾向にあるのです。
災害公営住宅の種類としては、地域や世帯数などに応じて、都市型の集合住宅(マンションみたいな住宅)であったり、地方では長屋タイプがあったり、戸建て住宅があったりと色々です。
災害公営住宅はあくまで賃貸住宅に属します。
低所得者(高齢者夫婦など)で住宅建設が困難であったり、余生や後継者の関係などで住宅建設を諦めなければならない被災者などが選択します。
低所得者の救済を主な目的にしていますから、世帯全体の所得が多い世帯が選択すると、所得によって賃貸料が決まってくるので、高所得世帯では、普通の民間賃貸住宅の家賃と変わらない位の賃貸料を払うことになり、後悔しいている世帯がいるのも事実です。
また、低所得世帯では賃料が安いといっても、震災前は自宅に暮らしていて賃料などはなく、被災後の仮設住宅においても賃料はかからなかったので、公営住宅に入居によって、初めて賃料という追加の支出(経費)が発生する世帯も多いのです。
東日本大震災のように、特に収入が低い世帯のために、特別低減措置として6~10年は家賃を低減される可能性がありますが、それが終わると通常計算の家賃になり、年金生活世帯などには負担が大きいと問題になったりしています。
以上、災害公営住宅に申し込み賃貸にて生活再建の詳細については次のブログを確認してください。
6. 市主導型の防災集団移転事業に参加し住宅建設
被災者自ら組織を形成し地主と交渉し安全な土地を確保しての防災集団移転事業と異なり、住民が自ら動くことなく行政が計画提示した防災集団移転事業に対し応募するので楽な選択になります。
楽な反面、災害公営住宅同様にアンケートなどによって、自主的再建世帯を除く希望世帯数を把握してからのスタートなので再建が遅くなる傾向があります。
遅くなることで、アンケートの時期から状況が変化し、住宅再建から公営住宅に変更したり、住宅再建を辞退したり、結果的に空き地が発生し、被災者以外への募集を始めたり・・・。
以上、市主導型の防災集団移転事業に参加し住宅建設の詳細については次のブログを確認してください。
私が提案する住民・行政協同の再建
市街地では難しいと思いますので、地方で地域コミュニティが強く、高齢化が進んでいる地区に対し行政の支援を受ける前提での提案です。
コミュニティが強かった地区であっても、それぞれの世帯の事情は異なり、高齢者のみの世帯であったり、2.3世帯同居家族だったり、収入面でも年金生活だったり、自営だったり、サラリーマンだったり・・・。
そうすると、行政支援を受けての再建でも、災害公営住宅の入居を希望する世帯、防災集団移転促進事業に参加し住宅再建を希望する世帯と、同じ地域コミュニティの世帯でも選択が異なり、東日本大震災では選択によって分断されたケースが多いです。
従って、できれば、地域コミュニティ毎に、住民・行政がタイアップし、同じ場所(被災地から少し離れるとしても)で、災害公営住宅への入居や防災集団移転促進事業での住宅再建をミックスして参加者をまとめ、安全な土地を確保し、従来の地域コミュニティを守った再建ができることを切に願っています。
成功するポイントとして、
- 取りまとめや交渉力のあるリーダーシップの存在や、大学などの街づくり研究団体などの支援
- 全壊や半壊などの被害が異なり、修繕・修復して再建を果たす世帯がいる場合は、なるべくその近くに安全な土地を確保。
- 場所が移動したとしても、従来の住民の営みや習慣の継続。例えば、家の近くの畑で家庭菜園や花木栽培を行っていた世帯のために、移動した場所の休耕地などを活用した土地の確保や、趣味やコミュニティのために集まれる集会所の確保など。
- 震災前より生活環境改善を目指し、スマートシティ化(複数の地域コミュニティを集約)し、公共交通手段の改善や移動販売店の誘致を目指すなど。
被災地の状況がそれぞれ異なりますので、そう簡単ではないことは承知していますが、東日本大震災の教訓を生かし、地域コミュニティを守り、更に展開し、全体最適な再建につながることをお祈りしています。
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