洪水・土砂災害から身を守る避難計画とハザードマップ
高齢者だけに任せられない避難計画
前回、正常化バイアスについて触れましたが、洪水や土砂災害から身を守る避難計画を検討する際には、高齢者だけに任せておいては事が進みません。
歳を重ねるほど、正常化バイアスが強くなり、自然を相手に、自らのほんの短い経験から、『うちは大丈夫】と結論づけたら、それを変えさせることは非常に困難だと思います。
いくら、その家の場所がハザードマップの洪水や土砂災害に遭うリスクの高い、危険区域に指定されていたとしても、
『今までに我が家にくることは1回もなかった』
『避難するより、我が家が安全!』
になってしまう傾向が高齢者には強いのです。
昔と違って、気球温暖化などの変化で、短期間で豪雨の降り方が全然違ってきているのに、今までに発生していなかった地域にどんどん発生しているのに、耳をかさない・・・。
でも、そのままにしておいては、災害のリスクが高いところに住んでいる高齢者の命を守れる保証はありません。
そこで、避難計画を検討する際のポイントとして参考にして頂きたいことは、
親子だけではだめです。
高齢になるほど子供の言うことをきかない親が多いですよね(笑)。
でも、どうでしょう?
もし、お孫さんとかがいると、自分の子供より、仲良しで、なんでも『ハイハイ』になりませんか?
お孫さんだけでなく、高齢者が言うことききやすい若者がいませんか?
要するに、けんか腰で強制的な環境下で避難計画を立てるのではなく、正常化バイアスが成熟していないお孫さんなどのお子さんも参加してもらい、和気あいあいの中で、でも中身は真剣に避難計画を検討してもらいたいものです。
高齢者の避難するタイミングと避難の考え方
高齢者の避難のタイミングは早く!分かっていても・・・
今回の西日本の大雨による災害において高齢者の避難が遅れ、自宅に在宅のまま、亡くなってしまった、という事象が多かったと聞きました。
大雨による土砂・洪水災害において、現在の天気予報の精度からは、数日前から喚起し始めていて、高齢者においては、いかに早く避難開始の行動に移すかが重要です。
注意報、警報、特別警報と事態が深刻になっていく中で、自治体による喚起も、避難準備情報、避難勧告、避難指示と変わっていきます。
平成28年に襲来した台風10号の被害を教訓に、高齢者には避難準備情報の時点で、高齢者等避難開始の提起を行うことになり、理想としては、この段階に高齢者の避難計画を立てるべきです。
しかし、その段階において、極めて危険な状態になっているわけでもなく、進路がそれて、そのまま事が収まる可能性だってあるので、正常化バイアスが強い高齢者に、早い段階での避難行動に移させることは容易ではありません。
ガチガチな避難計画ではなく、
避難準備情報、高齢者等避難開始の勧告時点は、大雨注意報から夜間に大雨警報になる可能性が高いタイミング、即ち、その時点では危険が差し迫っている状況ではないので、そのタイミングに、
『危険だから万全に準備して避難して!』
って言っても、正常化バイアスが強い高齢者には無理だと思うのです。
そこで、ガチガチな避難計画ではなく、その時点の避難計画は、慰労的行事、孫に遊びにいく、みたいな感覚での避難計画を検討してはどうでしょう。
- 危険区域ではない、孫がいる家に泊りがけで遊びに行く。
- 危険区域ではない、友人や親戚宅まで泊りがけで遊びに行く。
- 安全で頑丈な鉄筋コンクリートの施設(スーパー銭湯や公共施設)に骨休みに行く。
要するに、避難を意識させず、万一のために、災害のリスクが高い自宅から、遊び・慰労感覚で安全な場所に移動させることを考えてはどうでしょうか?
避難準備情報(高齢者等避難開始)が出ると楽しみが増える感覚での避難計画をみんなで検討してみましょう!
避難計画にもハザードマップを活用
避難する候補地を検討する際にもハザードマップの活用が重要です。
- 避難先は危険区域から外れた安全な所にあるか?
- 避難するルート上に危険区域はないか?
土交通省ハザードマップポータルサイト~身のまわりの災害リスクを調べる~
はこちらから
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