時間でしか解決しないことがある(こころ)
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最終更新日:2024/01/17
被災者・遺族として震災体験からの教訓
東日本大震災から13年が経とうとしています。
震災から5年後には住宅再建を果たし、現在は普通の平凡な暮らしになりました。
しかし、その間にも国内で甚大な自然災害が繰り返し、元旦に発生した能登半島地震の災害ニュースを見る度に心が痛みます。
震災を体験し、被災者(自宅流失)・遺族(両親と妻を失う)となってしまい、復旧・復興のプロセスを体感し生きてきた私に今できることは!?
近くてボランティアの受け入れ態勢が整っているのであれば、即座にも行きたい気持ちがあるのですが・・・。
13年前の私と同じように、震災に遭って被災者や遺族になってしまい、過酷な環境下で、精神的にも甚大なダメージを受けている方々に、震災体験、復旧・復興プロセスを体感したからこそ、教訓として伝えることで、私と同じような立場になった方々へ、少しでもダメージの軽減になればとの思いで発信することにしました。
今回はソフト的(心、精神)なダメージに関しての教訓です。
後悔してもしきれない状況は・・・
自宅等を失ってしまった被害者、大切な家族や親族を失ってしまった遺族にとって、一番最初に精神的ダメージになる要因が『後悔』です。
特に、遺族になるとそのダメージは甚大です。
失った住宅や備品などは、頑張れば取り戻せる(再建・再取得する)可能性がありますが、失った大切な家族や親族は決して取り戻すことはできません。
従って、
『○○しておけばよかった。』
『○○しなければよかった。』
『○○を言っておけばよかった』
『○○を言わなければよかった』
という、後悔の念が、被災に遭った直後から日常茶飯事に襲ってきて、精神的なダメージの蓄積となっていきます。
更には、慣れない避難場所、不満足な衣食住の生活によるストレスが追い打ちに・・・。
そのような時に、
『頑張って!』
『あまり考えないで』
という慰めの言葉は、同じ立場の方であれば良いかも知れませんが、体感していない方々からの言葉は、『お前に何が分かる!?』という感情的になる可能性もあり、あまり役に立ちません。
後悔するな、って言ったって無理です。
時間という処方箋
『時間でしか解決しない』
『時間が解決に向かってくれる』
ネガティブかポジティブかによって表現方法は異なりますが、後悔の念に伴う精神的ダメージを回復する要素としては『時間しかない』、と私は思っています。
震災遺構・伝承館での語り部の中で、私が立ち直ってきた経緯としてカッコよく、
『時間という処方箋が効いてきた』
という表現で語っています。
人間って良くも悪くも『忘れていく動物』です。
震災直後に生じた後悔の念も、完全には無くなることはありませんが、時間と共に忘れていき軽減していきます。
震災直後の悲惨な状況や、起伏が激しかった感情すら忘れていきます。
時間という処方箋の効き方は個人によって差があります。
その人の年齢や性別、その人がおかれた立場、その人の健康や精神状態・・・。
私は鈍感なので効き方が早かったかも知れません。
効き方が遅い人でも、少しづつでも確実に軽減していくと思っています。
是非、そうなってもらいたいのです。
そのような状況下で『時間という処方箋をより効くようにする』ための私の教訓としては、
『自らの考え方と行動次第では少しでも早くダメージを軽減させることができる』
です。
起きている時の行動を考える
とにかく精神的にどん底な状況下だったとしても、私の教訓は、
『起きている時(起床時)は、未来に向かっての(ポジティブな)行動を継続する。』
私の震災直後の行動が少しでも参考になれば幸いです。
震災直後から工場の生産再開に注力
今考えれば、この行動があったからこそ、私自身が壊れなかった大きな要因だったかもしれません。
工場責任者の立場上、考える余裕もなく、この行動をせざるを得なかった状況でした。
工場自体は高台だったので被災は軽微でしたが、ライフライン(電気、水道、通信、交通手段など)が断絶状況から、避難場所を工場と決め、行政や当該会社との折衝・交渉や代替え検討など、生産再開のプロジェクト責任者として、日中のほとんどをその為の陣頭指揮にあたっていました。(詳細は体験談の行動をご確認ください)
数ケ月は、この仕事によって当然ながら能力・体力を使いますので疲れるし空腹になるので、晩酌するし(笑)、食べるし、日中は後悔する考えより優先されたのです。
しかし一人になって寝る時には、ネガティブな後悔の念が湧き出し、将来が不安になり、震災直後は寝不足が続くのですが、時間と共に日中の仕事に伴う疲労が蓄積してくると、少しづつですが寝不足も解消していきました。
震災体験談をまとめ発信する
生産再開の目途が立った時点で、脱サラによる第二の人生を歩むことを決意するのですが、退職する前に通常業務を行いながらも、工場や私に起きた災害や復旧プロセスを体験談としてまとめ、今後の社員やその家族の自然災害に対する減災・防災へのヒント、会社のリスク管理の改善に生かしてもらいたいと作成し発信し続けました。
近所の被災者の方々と農地回復作業
退職後、個人事業主として事業(宿泊業)を開始する前に、行政主導の報酬をもらいながらの仕事として、近所の被災者の方々と一緒に農地の瓦礫の撤去・草刈り作業に従事し、被災者の方々とコミュニケーションを図りながら、その後の復旧・復興に多少なりとも貢献したと思っています。
これまでの行動で導かれた第二の人生
私の場合は、この期間(約1年)が、時間という処方箋が着実に効いた期間で、第二の人生を歩む上での助走段階でもありました。
そして、この頃に導いた第二の人生の方針は、
『亡くなった家族の分まで生きる!』
であり、その生き方は、
怒哀を捨て喜楽に生きる!
地元気仙沼で生きる!
海と向き合って生きる!
でした。
未来に向かっての(ポジティブな)行動って?
前述は私の行動の事例ですが、他にどういう行動があるのか?
その人の年齢や性別、その人がおかれた立場、その人の健康や精神状態によって様々だと思います。
また、時間が経つに従って行動内容が変わっていくことも多々あると思います。
ポイントは『未来に向かって、これからのために』ということになりますが、東日本大震災で実際にあった行動を列記しますので、少しでも参考になれば幸いです。
- 被災者ボランティアとして、避難所や仮設住宅などで、他の被災者が生きるための支援を行う。(私は工場に避難していたのでこれが出来なかった)
- 生きるための衣食住の支援物資を確保する。確保するための行動を起こす。
- 自分のこれからの健康のための行動する(散歩や体操など)。
- 刻々と変化する行政の生活再建に向けた支援を積極的に収集し、生活再建への選択や道筋を検討する。
- 被災者の方々と一緒に共通する得意分野の作業(販売等の収益があるケースも)する。
- 被災者の避難所や仮設住宅でのコミュニケーション推進のための行事などを企画・開催する(参加するだけでも良い)。
- 地元の将来に向けて復旧・復興に役立つことを考え選択し行動する。
- 新たな場所での生活再建に向けて考えてまとめて相談して実際に見てみる。
とにかく、ポジティブ的な行動であれば何でも良いのです。
震災直後は後悔の念から塞ぎこみやすくなりますが、起きたことから逃げることも、過去に戻ることもできません。
起きている時は、前向きにポジティブに未来に向けての行動を意識的にとって、過去に対する後悔の念が生じる状況を少なくし、『時間という処方箋』が少しでも効いてくる状況になっていくことを切に願っています。
次回はハード的(建屋、備品など)なダメージに関しての教訓です。
(つづく)
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